紀伊梨は仁王と真田と一緒に、山を歩いていた。
真っすぐゴールを目指してみた所、フェンスに突き当たったのだ。
そして、どこかに途切れ目ないかということでフェンスに沿って歩いてみてるのだが、だらだら続くばかりで一向に途切れる兆しも無し。
「・・・む。おい、止まれ!」
「およ?」
「何じゃ。」
「ルートから外れてきた・・・段々と遠ざかっている。引き返して逆側を確かめた方が良いやもしれん。」
「およよマジかー!あーん、めんどくさいよー!登りたいよー!」
「ならん!こんなもの、登ろうなどと思うな!怪我人が出るぞ!」
ただのフェンスだったら、あるいは真田もそうしようと言ったかもしれない。
ただし、これはただのフェンスではない。
有刺鉄線と組み合わされたフェンスなのだ。これではとても登れない。
「こうまでする理由があるんかのう。」
「おそらく、猪避けだろう。熊は居ないとのことだが、猪と猿は・・・む?」
真田は、ふとある考えが頭を過って黙りこくった。
猪避け。
そうだろうな、それは多分そうだろう。
問題なのはそこじゃなくて。
「あー!お猿さんだー!おーい!」
「たわけが、呼ぶんじゃない!」
「襲われても知らんぜよ。特にお前さんは、そのパンパンのリュック。」
聞かなくても、中にお菓子が詰まっていることは分かる。こんなもん、猿からしてみたら良い標的でしかない。
「えー、でも可愛いよ?」
「見た目はあれでも、野生動物じゃき。」
「そうだ!侮るな、戦うことになったら人間も無事では済まんぞ。まあ負けるとまではいかんだろうが。」
(お前さんくらいのもんじゃないんか、勝てるのは。)
「えー・・・おやつ一緒に食べようかと思ったのになー。」
「何があるか分からん。いたずらに猿になどやるな。必要な時のために、食料は取っておけ。」
「ほーい・・・よっ!と。」
話している間にも、紀伊梨は実に身軽にさくさく進んでいく。
ここだって道じゃない。普通に傾斜しているし、足下も悪いのに。
「バンドマンと思えん身体能力じゃな。」
「まったくだ。勉学も同様に出来ればいうことはないのだがー---おい、五十嵐!」
「へ?うおおおう!?」
紀伊梨はなんと、猿にリュックを開けられる寸前であった。
真田は反射的に石を投げた。
場合によってはこれは悪手なのだが、比較的臆病な個体だったのが幸いし、猿は慌てて去って行った。
「・・・びっくりしたー!」
「怪我はないか!盗られたものは!」
「だいじょび!はー、危なかったよー!」
「スリも真っ青じゃな。」
音もなく、気づかれない内に・・・とはまさに今のことだと仁王も真田も思った。
紀伊梨は結構気配とかそういうものには敏感なのだが、そこはやはり野生動物の方が優れている。
「まあ、とにかく事なきは得られたんじゃ。」
「そうだな。ぐずぐずせず、先へ・・・む?」
グループLINEが鳴った。