「・・・・・・」
「・・・・・・」
紫希と丸井は、2人でちょっと立ち止まっていた。
ここは、廃トンネル前。
中は真っ暗である。
「・・・ここって、向こう側塞がってんの?だから暗いのか?」
「ええと・・・あ、宇井トンネルって書いてあります。ええと、宇井トンネル・・・」
ここはまだ山の麓に近く、電波が通る。
ネットもできる。
「どうだって?」
「ええと・・・あ、トンネルは塞がってないそうです。」
「へえー。」
「でも、トンネルを出たすぐ先が土砂で埋まっていて、廃トンネルになったらしいです。」
「はー・・・んじゃ、ここを通っても行き止まりってことか。」
「そうですね。」
「え、じゃあ暗いのは?」
「単純に、長いからだと思います。ここからここまであるそうなので・・・」
「へー・・・うわ、マジだ。結構長いな、歩いたら30分くらいか。」
そうか。
行き止まりか。
そうか。
「・・・じゃ、行かなくて良いよな?」
「た、多分・・・」
今2人は、この間見た『憂暮れ』が尾を引いて、トンネルに敏感になっているのである。
まあ、それを差し引いても廃トンネルなんて危ない。中がどうなってるのかわからないし。
「OK、ここは飛ばすか。じゃあ?えーと、あっちだな。」
(上り坂・・・)
「どうした?疲れた?」
「い、いえ、大丈夫です・・・なるべく下を見ないで行きますから・・・」
「あ、そっか。柵がねえもんな、ここ。」
紫希と丸井のあてがわれたルートは、途中まで山道を登って、途中から道なき道へ入るルートであった。
だからもうしばらく山を登るが、山道と言ってもいろんな道がある。
その中でもここは、紫希が一番苦手なタイプ。柵どころか、ロープ一本張っていない。落下しようと思えば、即落下できる。
「俺が外側歩こっか?」
「いえ!丸井君が落ちてしまうのでそれはやめてください!」
「ははは!別に落ちねえと思うけど?」
首をぶんぶん横に振る紫希にとって、この道はどれだけ細く見えてるんだろうかと丸井は思う。確かに、林間合宿のときよりは断然狭いけど。
「あの、丸井君先に行ってくださいね、私遅いので・・・」
「逆だろい?置いていったらどうするんだよ、ほら春日が先。」
「えええ・・・・」
こうして2人は、トンネルのことをすぐに忘れて山道を登り始めた。